ひきこもり状態にある方のご家族のためのセミナー「寺子屋ふぁみりあ」

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セミナー報告

2015年7月

生きづらさを抱えた若者たち〜ひきこもりと自殺を急ぐ若者の心に通底するものについての臨床心理学的考察〜


7月2日の寺子屋ふぁみりあは、明星大学教授で公益財団法人日本精神衛生会理事の高塚雄介先生をお迎えしました。先生は長年にわたってひきこもりの問題を研究されており、最近では自殺の問題にも注目し、両者の関連についても言及されています。今回は長年の研究成果や調査結果に基づきながら、「生きづらさを抱えた若者たち〜ひきこもりと自殺を急ぐ若者の心に通底するものについての臨床心理学的考察〜」というタイトルでご講演いただきました。


日本における自殺者は、1998年に3万人を超えると、それ以降増え続け最も多い年には3万5千人を数えました。国も自殺予防大綱や自殺に関する法律を作るなど対策を講じ、その成果もあって、昨年はおよそ2万5千人まで減少しました。しかしながら、自殺総数は減少傾向にあるものの、若者の自殺は減っていないことを憂慮すべきであり、それは若者のひきこもりの増加と関係があると、指摘されています。ひきこもる若者の心理的状況と自殺に追い込まれる若者の心理的状況には共通するものがあり、それは自己肯定感の低さにある、とおっしゃいます。

私たちは、自分にとって居心地の良い状態を模索し、それが生きていくためのエネルギー源となります。私たちの居場所には、人間・空間・時間の3つがあり、信頼できる人がいない(人間)・家庭にも学校にも居場所がない(空間)・過去に楽しい経験がなく未来にも期待できない(時間)、というように、自分にとって居心地の良い状態がないと自分の中の攻撃性が歪んだ形で発起してくると、先生はおっしゃいます。そして、その歪んだ攻撃性が内に対して向けられると、ひきこもりや自殺につながってくると述べられています。

先生はひきこもりをもたらす背景要因として4つのケースを挙げています。

(1)不登校から次第にひきこもりになっていくケース

(2)何らかの障害や疾患があり、ひきこもりになっていくケース

(3)社会の価値観の変化などによりもたらされるケース

(4)心理的負荷によりもたらされるケース

   @人間関係に対する苦手意識

   A自己完結的世界への埋没

   B興味・関心を抱く世界へののめり込み

   C失敗・挫折体験から立ち直れない

そして、このうち(4)に近年のひきこもりの特徴が示されているといいます。現代日本社会は「自分を大切に」「ありのまま」「自分のやりたいことをやればいい」「自己決定や自己責任の重視」など、「自立」強化型社会にあります。それに伴って、

1、自己へのこだわり…他者からの指示・命令を嫌う

2、こだわりを貫く自信をもたない…批判・評価を恐れる

3、人間関係に対する警戒心・不安感…争い・対立を避ける

4、自己完結型世界への埋没…自己責任的世界の回避

などが生じ、ひきこもりへとつながっていきます。また、現代社会はグループ学習や意見交換を重視し、「言語的コミュニケーション能力」「対人関係を構築する能力」「テキパキと課題を遂行する能力」などの教育課題や就労課題を有することを当然視しています。高塚先生はそれらを有さない者を欠陥扱いし、排除するような現代の社会状況にも警鐘を鳴らしておられます。


後半の時間には、親御さんからご自身のお子さんの相談など具体的な質問がなされ、それぞれのご家庭で抱える状況に即して、先生より丁寧な回答をいただきました。


今回、高塚先生は以前崩された体調のリハビリ中であり、車イスでのご講演でした。最後に先生から「次は万全の体調でお話にきます」との宣言も飛び出し、改めてお元気な姿の高塚先生のお話を伺うことが楽しみになりました。

 

次回は8月6日、NPO法人くだかけ会主宰の和田重良さんをお迎えし、「平和を願い 平和を生きる」というテーマでご講演いただきます。


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