ひきこもり状態にある方のご家族のためのセミナー「寺子屋ふぁみりあ」

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セミナー報告

2011年7月

こころの拠りどころ

西來武治先生 寺子屋ふぁみりあ・平成23年度の2回目は、7月27日に31名の参加者の下、元千代田女学園中学高校長で僧侶の、西來武治先生をお招きして、「こころの拠りどころ〜親の老いをどう生きるか」と題してご講演いただきました。

 先生は大正13年生まれで、真宗高田派住職をされながら教職に就かれ、昭和46年より、自宅の電話を開放して「ダイヤルフレンド」を主宰。電話カウンセリングの草分けとして知られ、現在まで約18万件の相談を受けていらっしゃいます。また医事評論家、仏教者として臨床仏教学を提唱され、執筆、講演などでご活躍中です。

 以下は講演の要旨です。

 私はもともとは在家でしたが、三重県の真宗高田派の寺へ養子に入りました。病気を患ったことによってさまざまな苦しい思いもしましたが、いろいろなご縁をいただき、乗り越えて参りました。ご縁には良縁も悪縁もありますが、ご縁をどう生かさせてもらうか、それが重要だと思います。

 私たちの仲間の多くは、結核か戦争で亡くなっています。昭和20年代、日本人の平均寿命は50代でしたが、現在は80代です。また100歳以上の高齢者人口もうなぎのぼりで、日本は高齢社会に突入しております。理由としては、結核や乳幼児死亡の減少、栄養状態の改善、そして医療の進歩が挙げられるでしょう。けれども一つ言えることとして、平均寿命の伸長には、寝たきりや認知症の高齢者の増加が含まれているのも事実ですし、現代は生活習慣病の問題もあります。

 それでは、長生きしてどうするかですが、結論は出ませんけれども、一つのヒントとして、一日一日の積み重ねの中で、新しい知識を得ていくこと、たんぱく質などの栄養素をきちんと摂ること、運動をして使わない筋肉を使うことが大事ではないでしょうか。すなわち、健康で長生きすることが重要です。  昭和46年から一つの取組として、「ダイヤルフレンド」という電話相談を始めました。今までは勤務していた会社への相談電話が多かったのですが、夜、一人でも二人でも対応できたらという思いで始めたところ、マスコミにも取り上げられ、一日百数十件の電話が殺到しました。

 相談において一番の問題は、「聴く」ことです。表面的な情報を「聞く」だけでなく、相談者の深い心の闇を「聴く」ことが必要で、そのためには何度も電話を受けることによって、相手との信頼関係を築いていかなければなりません。またホスピスやビハーラといった、終末医療の担い手においても同様で、一番の問題は患者さんへの目線です。必ず座って、相手と同じ目線で話を聴くことが重要です。

 ひきこもりには5つの段階があります。

1.社会生活があり、会社や学校に行ける状態
2.社会参加をしていないが、家族との交流がある状態
3.母親としか心を許して話せる人がいない
4.食事を一人でしか摂らない。母親との会話も少ない。
5.家族に不信感を持っていて、部屋にこもりがち

 ひきこもり人口は50万人とも100万人とも言われていますが、だからといって、このままでよいのではありません。世の中には我慢に我慢を重ねて働いている人も多いです。私も教職に就いていた頃に不登校児はいましたが、医師やスクールカウンセラーとどれだけ信頼関係を築けるかが問題だと思います。

 現在の医療は、会話が不足していると思います。パソコンの画面を見てばかりの医師も少なくない。じっくり患者さんの話を聴くことが重要です。

 医者にかかる時とは、どういう時でしょうか。もともとは生命(寿命)の延長、すなわち死にたくないからですね。次に苦痛の除去。でも心の痛みは取りにくいので、お寺の出番になります。そしてリハビリ等を通じてよりよい社会復帰をして、病気になる前の状態にもどること。さらには、ホスピスやビハーラのような所で、死を迎える準備も、医療の使命の一つです。亡くなった方を、どれだけ大事にしていくかということです。

 私は、「臨床仏教学」を提言して30余年になります。「臨床仏教学」とは、現代社会・日常私生活の中での仏教(宗教)のあり方を考え、問題の解決の糸口を探り、仏教本来の役割である”生き方の指針””心の拠りどころ”を模索しようという試みで、臨床社会学、臨床心理学、人間学、福祉関係学など、隣接する社会科学と学際的に、またより実践的にとらえていこうとするものです。

 つまり、医学に基礎医学と臨床医学があるように、仏教にも理論仏教と臨床仏教があるのが当然ではないかという発想です。

 私としては、悩みの解決と同時に、仏教の実践活動についての広報活動と、例えば、寺院内の活動だった施薬院や施療院はどうなったのか、仏教と医療とのかかわり、医師、看護師の「心のケア」、脳死、臓器移植などについての仏教者としての発言、また仏教教義の歴史的変遷など、若い研究者にテーマを与えて、それを発表助成していくことなどを考えています。すなわち、お寺を有効活用していくべきだということです。

 それから、よき友の集まりは大事です。仏教の教えの基本は仲間です。「善き友をもち 善き仲間の中にあることは この道のすべてである」という言葉もありますし、よき住職や仏教者を見つけて、相談に乗ってもらってもいいと思います。仲間のいろいろな知恵をいただきながら、その上で自分の場合はどうなのかを考えることが大事です。物の見方を転換することができるかもしれません。寺子屋ふぁみりあは、そのような意味でも重要だと思います。 また、「暖かいハートにクールな頭脳」という言葉がありますが、これはカウンセリングの第一歩です。ここに集まった皆さん同士、仲間でありながら、一人一人がまた違った人生を歩んでいきます。そのために、さまざまな人から話を聴いて下さい。定年後は20年〜30年ありますが、どうするかはじっくり考えていただきたいです。

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